銀座みゆき通り美容外科の医師による学術論文紹介

医師向け学術専門誌 PEPARS.87号
「眼瞼の美容外科 手術手技アトラス」
全国病院出版会

下眼瞼形成術(目の下のくま治療)
「経結膜脱脂と脂肪注入の組み合わせによる下眼瞼形成術」

銀座みゆき通り美容外科総院長 水谷和則

手技のポイント

加齢などによる下眼瞼や中顔面の立体系の変化を、皮膚切開せずに脂肪組織の増減によって改善させる下眼瞼形成術について解説する。手術方法は、まず下眼瞼に膨隆した眼窩脂肪を経結膜脱脂することにより減量する。ついでnasojugal groove、palpebromalar groove、mid cheek grooveを谷底とした陥凹部分に脂肪注入して容積を増量することにより、下眼瞼途中顔面を滑らかで若々しく健康的な立体系に修正する。

下眼瞼の脂肪注入は精密な注入手技が要求され、注入する脂肪は粒子が細かく生着率が高いものが望ましい。このため吸引採取した皮下脂肪組織を細断し、加重遠心分離によって脂肪細胞と脂肪由来幹細胞を濃縮したものを使用している。


下眼瞼に生じる加齢変化の中で最も重要なものは、下眼瞼と中顔面の境界を覆い隠していた頬部の脂肪組織が減少あるいは下垂し、眼窩下縁周辺の容積が低下することによって、下眼瞼と頬の境界すなわちnasojugal groove(tear trough)やpalpebromalar groove(lid/cheek junction)、さらにその延長としてmid cheek groove(malar septum)が陥凹や陰影となって可視化されることである1)2)
実際、年齢に関係なく、中顔面に十分な膨らみがなく下眼瞼と頬の境界に陥凹や陰影があると、実年齢より老けて見えたり不健康に見えたりする。逆に、下眼瞼に加齢に伴う皴があったとしても、中顔面の高い位置に十分な膨らみがあり、下眼瞼と頬の境界に陥凹や陰影がなく滑らかであれば、若々しく健康的に見えるものである。
つまり下眼瞼や中顔面においては、皺の有無よりも立体系が加齢変化を決定づける要素であるということである3)
以上の観点から、私は皮膚や筋肉の引き上げをせずに、脂肪組織を増減することによって下眼瞼や中顔面を若々しい立体形に修正する下眼瞼形成術を積極的に行っている4)
手術の手順は2段階である。まず下眼瞼や中顔面の立体形を評価した時に不必要と思われる膨らみを減量する。Baggy eyelidがこれに相当し、経結膜的に眼窩脂肪を適量切除(経結膜脱脂)する。Baggy eyelidが認められない場合、この工程は不要である。
次に経結膜脱脂後の状態に応じて不足部分、すなわちnasojugal groove、palpebromalar groove、mid cheek grooveを谷底とした陥凹領域に脂肪を注入して容積を増量することにより立体系を完成させる。
皮膚の薄い下眼瞼やその付近に脂肪を注入し滑らかに仕上げるためには、粒子が細かく生着率が高い脂肪の準備が必要不可欠であり、精密な脂肪注入技術が要求される4)。注入脂肪は、下腹部や大腿内側部から吸引採取した皮下脂肪組織をホモジナイザーによって細断、ジェル化し5)、加重遠心分離によって血液や麻酔液、破壊された脂肪組織由来のオイルを分離除去して6)、脂肪細胞と脂肪組織由来幹細胞を濃縮したものを使用している4)


症例は39歳の女性。下眼瞼の膨らみ(baggy eyelid)と、眼窩下縁の著しい後退(negative vector orbit)が認められ、下眼瞼と頬の境界が陥凹して陰影となっている。
眼窩下縁から突出した眼窩脂肪を経結膜的に切除(経結膜脱脂)し、同時に経皮的に脂肪注入して陥凹部分を盛り上げることにより、下眼瞼から中顔面にかけての立体形を修正する手術を行う方針とした。

手術のデザインを示す。
経結膜脱脂(黒線)と脂肪注入(緑線)のデザインをマーキングした。脂肪注入針の刺入口を赤点で示した。左右各3ヶ所に刺入口を作成して注入する場合が多いが、症例に応じて臨機応変に行うのがよい。


手術は仰臥位で経結膜的脱脂を先に行う。
麻酔は0.4%オキシブプロカイン塩酸塩点眼液による表面麻酔後に、エピネフリン添加2%リドカインを使用して眼瞼結膜への局所浸潤麻酔を行なっている。下眼瞼を反転固定し、瞼縁から7〜8mm離れた位置で瞼縁に平行に15〜20mmほど、結膜と眼瞼嚢筋膜(capsulopalpebral fascia)を炭酸ガスレーザーで切開して、眼窩隔膜前面を眼窩下縁まで展開する。

眼窩隔膜を切開し、眼窩から突出した眼窩脂肪をクランプして切除する。眼窩脂肪は内側(鼻側)、中央、外側(耳側)の3ブロックに分かれており眼窩隔膜切開により最初に突出する脂肪塊は中央の眼窩脂肪であることが多い。通常、中央の眼窩脂肪の切除を最初に行い、ついで内側、最後に必要に応じて外側の眼窩脂肪を切除する。

眼窩脂肪の切除断端は電気メスで止血する。特に内側の眼窩脂肪は太い血管則を伴っており、同血管からの出血は術後血腫の原因となるため確実に止血する必要がある。

内側と中央の眼窩脂肪の間には下斜筋(黄矢印)が走行している。下斜筋を損傷すると眼球運動障害(複視)などの合併症を引き起こす可能性があるので、眼窩脂肪を切除、止血する際には注意が必要である。

左右それぞれで、内側(鼻側)、中央、外側(耳側)の3ブロックから眼窩脂肪を切除した。


経結膜脱脂直後の材の状態を示す。
Baggy eyelid症状は改善しているが、下眼瞼途中顔面は陥凹している。引き続き陥凹部分に脂肪注入を行い、下眼瞼と中顔面の立体形を完成させる。

注入する脂肪は大腿内側部や下腹部から吸引採取する。その理由は吸引カニューレを挿入するための皮膚切開部分が目立たず、痩せていても脂肪採取が比較的容易だからである。
大腿内側部の場合は鼠蹊部、下腹部の場合は臍窩部をそれぞれ5mm程度皮膚切開し、エピネフリン添加0.1%塩酸リドカインによるチューメセント麻酔後に、直径3mmのカニューレ付きシリンジで吸引する。
手術時疼痛を軽減させるために、チューメセント麻酔に先立ち、プロポフォールによる静脈麻酔を行う場合が多い。

脂肪をより多く生着させるために、吸引内容から不要な成分、すなわち麻酔液、血液成分、壊れた脂肪細胞由来のオイルを可能な限り除去して、注入脂肪の単位体積あたりの生細胞数を多くし、脂肪組織由来幹細胞の含有率を高くすることが重要である9)~12)。また注入脂肪内に空中浮遊菌が混入するのを避けるため、脂肪吸引から脂肪注入までの処理の全てをシリンジ内で行うのが望ましい。このためMedi-Khan社製のLIPOMAX-SCを使用して注入脂肪を調整している。
シリンジで吸引した脂肪は静置して沈殿した血液や麻酔液を廃液した後(a)、シリンジごと1200g、3分間の遠心分離を行う。シリンジには錘付きのフィルターが内蔵されており、遠心分離によりシリンジ内に圧が加重される構造になっている(加重遠心分離6))。この加重圧によって脆弱な脂肪細胞が破壊されオイルとなり、吸引操作によって破壊された脂肪細胞由来のオイルとともにフィルターにより分離される。一方、水分や血球成分は遠心分離によって沈殿し分離される(b)。
オイル、水分、血球成分を廃液した後のシリンジ内成分が、濃縮された健常脂肪細胞と脂肪組織由来幹細胞である(c)。


荒い粒子の脂肪、繊維製の組織が混じった脂肪は注入針に目詰まりする場合があり、精密な脂肪注入を困難にする。したがって吸引した脂肪の粒子や繊維性の組織は、注入針に目詰まりしにくい状態になるまで細断する必要がある。
このため濃縮脂肪が入ったシリンジ内にホモジナイザー(Medi-Khan社製Filler-Geller)を挿入して脂肪を細断しジェル化する5)

ホモジナイザーによって細断しジェル化した濃縮脂肪を、再びシリンジごと1200gで3分間遠心分離して、細断によって生じたオイル成分を分離する(a)。オイルを除去したものが注入用の脂肪である(b)。注入用の脂肪はさらに濃縮されるために単位体積あたりの脂肪由来幹細胞の含有率が高くなり5)、細い注入針での注入も可能である。注入脂肪は1mlツベルクリンシリンジに移して使用する(c)。

下眼瞼は特に皮膚が薄いため、脂肪注入によってしこりや凹凸を作らずに滑らかに修正するためには、手術中に皮下出血を起こさないこと、正確な位置に注入すること、1回注入量を微量に絞り分散注入することが重要である。
前述の方法で作成した注入脂肪は粒子が細かいため細い注入針でも注入可能であるが、1回注入量を正確にコントロールするためには注入圧をかけずに常に滑らかに注入できる太さの注入針を使用する必要があるため、主に20G針を使用している。また手術中の皮下出血を最少限度に抑えるため、そして血管内誤注入による塞栓症や神経損傷などの合併症13)~15)を予防するために、注射針は鋭針ではなく鈍針を使用している。
1回注入量を微量に絞るためには、微量注入の基本主義の習得が必要不可欠である。筆者の場合は小指球に脂肪注入用のシリンジの端をあて、シリンジを全指で包むように保持し、握るような動作をすることにより微量を絞り出している(a, b)。手技を習熟すると、0.1mlを20〜30分割して注入できるようになる。1回注入量がわかりやすいように爪楊枝を添えて、注入のデモンストレーションを行なった(c, d)。


脂肪注入の実際を示した。
麻酔はエピネフリン添加2%塩酸リドカインを使用して眼窩下神経ブロックと注入針の刺入部位に限局した局所浸潤麻酔で行なっている。脂肪注入部位に麻酔液を注入すると、局所が膨隆して注入の際の適切な判断が難しくなるためである。
脂肪注入は仰臥位で行うが、座位に近い状態で下眼瞼や中顔面に注入するために、開瞼開口させながら行う。
まず鈍針の刺入点に20G鋭針を穿刺して、皮膚に刺入口を作成する。
次に同部から20G鈍針を刺入し、まずnasojugal grooveやpalpebromalar grooveの皮下や眼輪筋内に先端を進め、微量に分散させながら脂肪を注入する(a)。脂肪をソーセージ状に絞り出して注入すると、しこりになって修正困難になる場合があるので、脂肪は点状に分散注入することが重要である。
Nasojugal grooveやpalpebromalar grooveが平坦に修正されたら鈍針を眼輪筋下、皮下脂肪(malar fat)内に刺入し、皮下や眼輪筋内の注入よりやや多めの量を点状に分散注入して、注入範囲全体を盛り上げるようにする(b)。
ただしmid cheek grooveなどの陥凹が強い部分では、単純に注入量を増やすと患部全体の皮膚が緊満氏、盛り上げが不十分になりやすい。陥凹部分をしっかり盛り上げたい場合には、鈍針を途中で屈曲させて(c)、市田が開発した垂直上方注入法14)によって脂肪を垂直に積み上げるように注入するのが効果的である(d)。
ある程度の脂肪を注入したら、綿棒の先で注入範囲を細かく押しつぶすようににして注入脂肪をなじませ(e)、座位にして状態確認を行う。注入不足部位があればマーキングして再び仰臥位で脂肪注入、座位で確認という工程を繰り返して立体形を完成させる。


経結膜脱脂と脂肪注入を同時に行った手術直後の状態を示す。
Baggy eyelidとnegative vector orbitが改善し、下眼窩縁には十分な容積が確保され、下眼瞼と頬の境界に認められた陥没や陰影が消失した。

手術3ヶ月後の状態を示す。
手術前に認められた下眼瞼と頬の境界の陥凹や陰影が消失し、表面は滑らかで頬部はふっくらと丸みを帯び、最も隆起した部分が中顔面の高い位置に保たれ、隆起は頬前面から頬骨弓、眼窩外側へと広がっている。
若々しく健康的な下眼瞼や中顔面の立体形に改善したと考えられる。


症例:44歳、男性

手術前と手術3ヶ月後を比較した。
手術前はbaggy eyelidとnegative vector orbit症状が認められ、下眼瞼と頬の境界が陥凹して陰影となっている。
経結膜脱脂と脂肪注入の組み合わせ手術によって、下眼瞼から中顔面にか

症例:52歳、女性

手術前と手術3ヶ月後を比較した。
経結膜脱脂と脂肪注入の組み合わせ手術によって、下眼瞼から中顔面にかけての立体形が修正された。


参考文献

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